「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「私もそう思う…
だが、クートゥーの王か王子夫妻はおそらく招かれていると思うのだ。
クートゥーと我が国は昔から親交が深いからな。
なんとかして彼らに連絡を取り、ターニャと会えるようにしてもらえないだろうか?」

ラーシェルの申し出に、ギリアスの表情は曇った。



「……陛下……」

「ギリアスさん!俺…やってみます!」

突然、名乗りを上げたセスに、皆、同様に驚いたような顔を向けた。



「だが…」

「明日の準備で城はごった返している筈です。
様々な荷物を持って来る者も多いと思います。
それになんとかして潜り込んでみます。
俺は元々この城の者ではありませんし、知った者はいません。
それに、どう見ても俺は兵士や剣士って柄ではないから、なんとかなると思います。」

「しかし……万一、捕えられたら…」

「その時は……舞踏会を一目見てみたかったとかなんとか言って誤魔化してみます。
大丈夫ですよ。
武器も何も持たずに行けば、まさか殺されるようなことにはならないでしょう。
……そうだ、ギリアスさん!
俺、多少なら笛が吹けるんですが、それを口実に舞踏会に紛れこむことは出来ないでしょうか?」

「それは難しいと思う。
舞踏会の時の演奏は、いつも城の楽団が受け持っている。
幼い頃から英才教育を受けた一流の音楽家ばかりだ。」

「そうですか…俺なんかの腕じゃどうにもならないってことですね。
……でも、とにかくなにか考えてみます。
舞踏会は明日…いや、後数時間後には始まります。
ゆっくりと考えている時間はありません。
とにかく、城の中に一番侵入しやすいのは俺なんです。
どうか、俺にやらせて下さい!」

「……わかった。
では、セス……頼んだぞ。
くれぐれも無理はするな。」

セスはギリアスの目をしっかりとみつめて頷いた。
ラーシェルから水車小屋の鍵を受け取ると、セスは、ついさっきライアンの駆け抜けていった抜け道を走り出した。
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