「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




(やっと着いたか…)

セスは、大きく肩を動かし、安堵の溜め息を吐き出した。



通路は思ったよりもずっと長く、進んでいるうちにセスはどこか不安な気持ちになる程だった。
だが、進むにつれ、湿った少しカビ臭い臭いが薄れていき、時折どこからか感じる風が出口はそう遠くないことを感じさせた。
セスは足元に注意を払いながら、ただひたすらに走り続けた。
ようやく辿り着いた突き当たりの階段を上り、預かって来た鍵を手に取ったがその扉には鍵はなかった。
誰もいないことはわかっていたが、それでもあたりの物音に注意しながらセスは慎重に扉を押し開ける。
どこにも光る石の付いてない水車小屋の内部は真っ暗だった。
目を凝らし、セスは外への扉を探り当て、先程の鍵を鍵穴に挿し込んだ。
軽い音が静かな水車小屋に響き、鍵が外れた感触がセスの手に伝わった。




(これは、どのあたりになるんだろう?)

セスは扉を僅かに開いて顔をのぞかせ、耳を澄ませてあたりの様子を伺う。
誰もいないことを確かめると、セスは扉を閉め、鍵をかけた。



(あ…搭があんな所に…
思ったより離れてるんだな。)

月明かりに照らし出された搭を見て、セスは城の場所を知った。
城のすぐ傍かと考えていたその場所は、セスが考えたよりもずっと離れた場所にあった。




(考えてみれば当然だな。
城からすぐ近くじゃ、逃げても見つかってしまう可能性か強い。
だから、こんな場所までトンネルを掘ったんだ…)

セスは、今更ながらそんなことに感心し、今、脱出して来たばかりの城へ向かって歩き始めた。
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