「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
(とりあえず、朝までここで待ってみよう。
城に何かを運んで来る者達が今日はたくさんいるはずだ。)

セスは、まだ暗い空を見上げ、城門の見える場所に腰を降ろした。
立て続けに様々なことが起こり、心身ともに疲れているはずなのに、気が張っているせいか、セスはまだその疲れを感じることはなかった。
あったとしても、今は身体を休めることも出来ない。
そんなことを考えていた最中、がらがらというけたたましい荷車の音がセスの耳に届いた。
音のする方を見ると、数台の荷車が列を連ねて走って来る所だった。
セスはすっくと立ち上がり、道の真ん中に飛び出し手を振った。



「どけどけ!
こっちは急いでるんだ!
怪我しても知らねぇぞ!」

「頼むからちょっと待ってくれ!」

「なんだ!こっちは急いでるって言ってるだろ!」

先頭の荷車をひいていた男が不機嫌な顔で荷車を停める。
男はずっと駆けてきたと見え、滝のような汗を首にかけた手拭いで拭った。



「実は、俺、明日の舞踏会がどんなもんだか一目で良いからみてみたいと思ってて…」

「城に入りたいのか?」

「え?あ、あぁ、そうなんだ。」

「一生懸命働くと誓うか?」

「あ?あぁ、もちろんだ!」

「おかしなものは持ってないだろうな!?」

「何もないよ。」

男は矢継ぎ早にセスに質問を投げかけ、更に、セスの身体を叩いて武器などを持っていないことを確かめると、セスの目を見据えて頷いた。



「よし、連れて行ってやる。
じゃあ、行くぞ!
時間がないんだ。
荷車を押せ!力一杯にな!」

「わ、わかった!」

あまりにうまくいきすぎた出来事に、動揺している暇もなく、セスは言われるままに荷車を力一杯押して走った。



「御注文の絨毯をお持ちしたバンディです。」

「話は聞いている。
早く頼むぞ。」

門が開き、荷車が入りかけた時、門番の鋭い声が飛んだ。



「待て!」

その声に、セスの背中に冷たい汗が流れ、鼓動は早鐘を打ち始めた。



「なんです?」

「バンディの店の者は六人と聞いているが、七人いるではないか!」

「無理言って一人追加で連れて来たんですよ。
今から広間の絨毯を全部敷き替えるんだ。
六人だって間に合うかどうか…」

「しかし、書類では…」

「じゃあ、お偉いさんに連絡を取ってどうするか決めてくれ。
しかし、遅れた時間はあんたのせいだ。
万一、間に合わなかった場合は、あんたが責任を取ってくれるんだろうな!?」

バンディは、荒荒しい口調で若い門番に詰め寄った。



「……わ…わかった。
早く行け!」

「良し!行くぞ!」
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