「異世界ファンタジーで15+1のお題」四






「で……ですが、私は……」

「……どうかしたのか?
今夜は特にたいした用事はないはずだろう?」

「いえ…そういうわけでは…
ただ、各国の要人の集まる中に、私のような者が混じるのが気が引けて…」

夕方になって、急に今夜の会食に出席するようにと大臣に命じられ、シスター・シャーリーは困惑を悟られないように適当な嘘で誤魔化した。



「そんなことなら気にすることはない。
それよりも…おまえにはちょっと確かめてほしいことがあってな。」

「確かめる……?
一体、何をですか?」

「クートゥーのお妃が急に体調を崩し、その姉だという者が代わりに来たのだが…
その者がどうも…な…」

そう言って大臣は俯き、顔を曇らせた。



「どういうことですか?」

「それが……なんというのか、まだ勘でしかないのだが…なにやらおかしな気配がするのだ。
まず、妃が来れぬなら皇太子が来るべきだろう。
なのに、なぜ、姉なんだ?
先程、到着したのだが、あの髪はどうもかつらのようだった。
しかも、まるで顔を隠すような大きな帽子をかぶっておった。
なぜ、そんな小細工をする?
どうもいやな気がする…
おまえの席をその者の向かいにするから、どんなことでも良いから調べるのだ。
そして、会食後には二人っきりになる機会を作り、それとなく話をしてみろ。
尻尾を出すかもしれん。」

「……わかりました。」

「では、会食の時間に遅れぬようにな。」

去って行く大臣の後ろ姿をみつめながら、シスター・シャーリーは小さな溜め息を吐いた。



(どうしましょう。
今からでは診療所へ知らせに行く時間はないわ…
ギリアスさんに知らせるべきかしら…
でも、そんなことを言ったら、却って心配させてしまいそうだわ…
……そうだ!
クートゥーのお客様と二人っきりになってから逃げ出せば、間に合うかもしれないわ!
そう、その時がチャンスなのよ!)

シスター・シャーリーは、新たなアイディアを胸に歩き出した。
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