「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




(困ったわ…思ったよりも遅くなってしまった…)

シスター・シャーリーは壁の時計を盗み見ながら、内心の焦りを微笑みで隠した。

一組の招待客の到着が遅れ、会食は小一時間遅れて始まった。
大臣とは面識のない者ばかりだったが、招待客は国の異変について様々なことを聞きたくてうずうずしていたようで、最初の客が口火を切ると、その後は立て続けに質問が投げ掛けられ、それに対し、大臣の側近のセバスチャンが面白おかしく答えるため、会話は予想外に盛りあがった。
そこに酒が入ると、客達の話や笑い声はますます高く賑やかに響いた。




(メアリー様に特におかしな所はないわ。
かつらをかぶられてるのも、ただのおしゃれなんじゃないのかしら?
確かにお顔を隠そうとされてるようにも思えるけど、不自然と言う程じゃないわ。)

大臣から監視を頼まれたクートゥーのメアリーは、口数の少ない物静かな女性だった。
口数が少ないとは言っても、愛想が悪いということはなく、始終優しい笑みを絶やさず、言葉や口調も丁寧で品の良いものだった。
大臣が、なぜ、この女性におかしな気配を感じるのか、シスター・シャーリーには全く理解出来なかった。



「シスター・シャーリー…
私、少し風にあたりたいんですが、城の中を案内していただけないかしら?」

「え……はい、わかりました。
では、中庭にでも参りましょうか…」

立ちあがったシスター・シャーリーとメアリーを見て、大臣は満足そうに微笑み頷いた。
シスター・シャーリーはそのことに気付き、同じように小さく頷き返す。








「風が心地良いわね…
……それにしても、あのセバスチャンとかいう方はどういった経歴の方なのですか?
まるで、道化のようにお話になるのね……あら、失礼。」

「いえ……
私はあまり皆様の経歴については知らないのですが…おそらく、大臣がこちらを取り仕切るようになられてから採用された方だと思います。」

「……そうでしょうね。」

メアリーは、そう言って今までとは違うどこか意地の悪い微笑みを浮かべた。



「……あなたはシスターなのですね?」

「はい。そうです。」

修道服を身に着け、さらにシスター・シャーリーとすでに紹介されているのにも関わらず、わざわざそんなことを尋ねるメアリーに、シスター・シャーリーは違和感を感じた。



「……あなた…修道女なのに、なぜ、あんな大臣と情を交わしているの?」

「えっっ!」

思い掛けないメアリーの言葉に、シスター・シャーリーの顔は燃えるような熱を帯び、鼓動は急激に速さを増した。
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