「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「メ、メアリー様、い、一体、な、何を…」

シスター・シャーリーの声は震え、取り繕うことが出来ない程にその表情は強張ったものに変わった。



「あなたの美しい魂が、大臣によって穢れて来ているのが感じられます。
それもその筈…あの者は……人間ではありません。」

「えっ!?」

シスター・シャーリーの戸惑いは計り知れない程大きく、それ以上、何も言うことが出来なかった。



「あの者は…」



「シスター・シャーリー!」

メアリーが話し始めた時、薄暗がりの中から男の声が聞こえ、二人は驚いた顔で振り向いた。



「あなたは…!」

「シスター・シャーリー、なぜ今頃こんな所に…!?」

「あなたこそ!
なぜ、こんな所に…!
まさか、国王陛下の身に…あ…」

シスター・シャーリーは、メアリーの前で大変な失言を口にしてしまい、慌てて口許を押さえた。



「陛下って…あなたまさか……」

「なんでもありません。」

「大切なことなの!はっきり言ってちょうだい!
あなた方は、ラーシェル様にお仕えしている者なの!?」

メアリーの気迫に押され、セスは思わず頷いた。



「セスさん!」

「シスター・シャーリー…この人は信じられるような気がする。
俺は、陛下から頼まれたことを実行しなくてはいけない。
そのためにもこの人の助けが必要なんだ。」

「でも……」

「……信用して下さってありがとう。
無闇に知らない人を信じる事は危険だけど、今はそんなことも言ってられないほど、切羽詰ってるのね。
でも、あなたの今回の判断は正しかったわ。
私はラーシェル様をお救い出来ないものかと思ってここにやって来たの。」

「メアリーさん…本当なんですか?」

メアリーは、シスター・シャーリーに顔を向け、ゆっくりと頷く。



「本当よ。それとね、メアリーっていうのは仮の名前なの。
私の本当の名前はターニャ…」

「ターニャ…!?ま、まさか!
あなたはクートゥーの魔術師のターニャ様なのですか?」

「ええ、そうよ。」

「陛下があなたに会いたがっておいでです。
そ、そうだ…お二人共こちらへ…!」

セスは建物の中にいる者達にみつからないように、二人を荷車の停めてある場所へ案内した。



「お二人ともここに乗って、しばらくの間じっとしておいてください。」

「これで城の外へ行こうというのですか?
無理よ。今夜は門番が寝ずの番をしているはずよ。」

「良いから、僕の言う通りにして下さい!」

セスは、二人を荷車に乗せ、その上に布切れをかけると、凄まじい勢いで走り始めた。
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