「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




「開けてくれ!
早く門をあけてくれ!」

セスは、荷車を引きながら、大きな声を張り上げ門番に向かって叫ぶ。



「な、なんだ!?」

「急いでくれ!
一枚、違った絨毯が紛れこんでたんだ!
早くちゃんとしたものを取って来ないと間に合わない!」

「あ…わ、わかった!」

若い門番は、先程のバンディとのやりとりがあったせいか、セスに言われるままにがらがらと門を開いていく。



「ありがとう!」

セスは門番の顔を見ることもなく礼を言い、城門を擦り抜けた。
勢いを緩めることなく、そのまましばらく走り続け、城門が見えなくなった所でセスは不意に荷車を停めた。



「ターニャ様、シスター・シャーリー、ここで降りて下さい。」

「すごい運転だったわね。
振り落とされるんじゃないかとひやひやしました。
でも、うまくいって良かったわ。
これからどうするつもりなの?」

「ちょっと待って下さいね。」

セスは茂みの中に荷車を隠し、二人を手招きする。



「こっちです。
さ、急いで!」


三人は暗い夜道を走り続けた。
幸いなことに、追っ手が来るような気配はなかった。
おそらく、三人が姿を消したことも特にあやしまれてはいない…いや、まだ気付かれてもいないのだろうとセスは推測した。
だからといって油断は出来ない。
周りに気遣いながら、セスはようやく二人を水車小屋に案内し、隠し部屋に続く階段を降りて行った。




「ここまで来ればもう安心です。
……ターニャ様、大丈夫ですか?」

「え…ええ…
こんなことになるのなら、もう少し普段から身体を鍛えておくべきだったわ。」

滝のような汗を流し、息を切らして話すターニャの冗談に、セスやシスター・シャーリーも微笑んだ。



「あと少しです。
さぁ、行きましょう!」

セスの言葉に、二人は深く頷いた。
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