「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「ターニャ…私はルシアンがどんな風にあの者に騙され、どんな約束を交わしたのか等、詳しいことをまるで知らない。
それを聞かせてくれないだろうか。」

ラーシェルはすがるような視線で、ターニャをみつめた。



「もちろんです。
……ですが、まずはあいつを倒してからです。
ラーシェル様、明日「祝福のワルツ」が始まったら、広間に入って来ていただきたいのです。
おそらく、その場はたいそう混乱することでしょう。
大臣も、逃げ出した筈のあなたを見れば酷く動揺する筈。
その隙をつき、私はあの者の真実の姿を現す呪文を唱えます。
あなた方は、その場にいる客達をすみやかに避難させて下さい。
私は続いて、弟子達と一緒に光りの術であの者を倒します。
召使だと偽り、連れて来ているのです。
ただ…闇の者を浄化するのはそれほど簡単なことではありません。
あの者がどの程度の魔力を持った者なのか…また、どのような反撃をして来るか、それは私にも全く予想がつきません。
警護の者達もどういう反応を示すか、まだわかりません。
もしかしたら、ラーシェル様に刃を向ける者もいるかもしれません。
あなた方はとにかくラーシェル様と客の身の安全を守り、そして、出来るだけ、私が集中して詠唱を続けられる環境を作っていただきたいのです。」

「わかりました。
ここには幸い武器や防具もありました。
たったこれだけの兵では心許ないですが、私達は命を賭けて戦います!」

ターニャは、ギリアスに向かって深く頷く。



「頼みましたよ。
では、私達は戻ります。」

「えっ!?」

シスター・シャーリーは驚いた顔でターニャをみつめた。



「ラーシェル様が逃げたことがもう発覚しているかどうかはわかりませんが、少しでも異変は少ない方が良いのです。
私達も何食わぬ顔をしていなければ…」

「で…でも、今度はどうやって城の中に…」

「それならば、こちらから行かれると良い。」

ラーシェルは立ち上がり、地下の通路を案内し始めた。



「ここは、城の地下です。
シスター・シャーリー、このあたりの様子はご存知ですか?」

「はい、何度か来たことがありますからだいたいはわかります。」

「それは良かった。
では、みつからないように行って下さい。
シスター・シャーリー…後少しです。
後少しですからね。」

ギリアスは、言い聞かせるようにそう言うと、シスター・シャーリーの手を握りしめ、ゆっくりと頷いた。
< 69 / 91 >

この作品をシェア

pagetop