「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




(あと少し……)

シスター・シャーリーは心の底でそう呟くと、窓辺に腰掛け、夜空に浮かぶ半分の月を見上げた。
とても疲れているはずなのに、神経が高ぶっているせいか目が冴えるばかりで、シスター・シャーリーは眠ることを諦めた。
長かった夜もあと少しすれば明ける…



(だけど…私の心の闇は消えない…
大臣が悪魔だったなんて…
そして、よりにもよってそんな悪魔と交わってしまったなんて……なんておぞましい…)

シスター・シャーリーは両手で顔を覆い、ざわめく胸を無理に押さえ付けた。



(考えちゃ駄目…!
今はそんなこと考える時じゃないわ。
この先のことを考えるのは、すべてが終わってから…
そう…この日のためにここまで頑張って来たんですもの。
眠れなくても少し横になって身体を休めておかないといけないわ
明日、どんなことがあるか、わからないんですもの…)

シスター・シャーリーは、窓を閉め、大臣の部屋のものとはまるで違う粗末な寝台に身を横たえた。







「なんだって!
じゃ、シスター・シャーリーはあっちには行かなかったのかい?
……まぁ、無事なら良かったけど、でも一体なぜ?」

診療所にシスター・シャーリーが来ていないことを知ったライアンは、診療所の協力者達にラーシェルの救出を伝えた後、しばらく待ってから再び地下の隠し部屋へ戻った。



「それが、さっきは時間がなくて聞くことが出来なかったんだ。
陛下がどうしてもクートゥーのターニャ様に会いたいと言われて、俺が舞踏会に忍びこんでクートゥーから来られてる方に連絡を取るつもりだったんだ。
幸い、絨毯屋に混じって城に潜入することは出来たんだが、こき使われて疲れて中庭で一休みしていた所にシスター・シャーリーを発見し、彼女の連れがターニャ様だったって知った時は本当にびっくりしたよ。」

「なんだって!?
それじゃあ…陛下はターニャ様に会われたのか?」

「あぁ…それで明日のことなんだけど…」



「ライアン!戻ったのか!」

隣の部屋から出て来たギリアスが、驚いた顔でライアンをみつめた。



「はい、シスター・シャーリーが来ていなかったので心配したんですが、今、セスから話を…」

「ロジャーはどうしてた?
元気にしていたか?」

ギリアスは、ライアンが話し終わるのも待ちきれないようにライアンに近付き、ロジャーの容態を尋ねた。
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