崖っぷちミッソジーニョ(三十路女)結婚までの戦い

「愛人だったら良いよ。」
この言葉は、別れた2歳年上の元カレの清原が、ついさっき涼子に対して言い放った言葉だった。
 涼子はわざわざ、この言葉を聞くために、電車で2時間以上かけて、千葉の市川まで清原に会いに出かけた。
「愛人だったら良いよ。」
 この言葉を聞くまで、涼子は清原と復縁できると思っていたのだ。
 涼子の未練たっぷりのメールに対して清原は、市川で会って話をしよう・・とメールで返信してきた。どうして市川なのかは涼子には分からなかったが、清原と久々に会えることが嬉しかった。
涼子は新しい洋服を着て、美容院へ行って髪をセットした。そして清原から、もう一度やり直そう・・という言葉を聞くために、市川へむかった。
別れた元カレ清原は、絵に描いたようなB型の男だ。我儘で自己中心的な性格、他人を振り回すのが大好きだ。
遠くで見ているぶんには、面白い人間かもしれない。だけど、こんな男を彼氏にすると、彼女は最悪だ。
恋愛は宗教と同じ。マインドコントロールされてしまうと、こういう我儘で自己中心的な男ほど、手放したくなくなってしまう。
涼子にとって、とても価値のある男だと思わせてしまう。そんな何かを、元カレの清原は持っていた。
喧嘩を繰り返しながらも二年ちかく付き合った。

清原と別れたのは、ちょうど一年前のバレンタインデーだ。涼子は、あれから1年か・・はやかったなあ・・と思った。
約束の時間、7時。市川駅の改札で、涼子は20分も前からまっている。
薄いピンクのブラウス、グレーのスカート、白いセーター。清原から会おうとメールがきてから、涼子は洋服を新調した。清原の洋服の好みは分かっている。派手な服装の女性は嫌いだ。上品で清楚で女の子っぽい服装が好みだ。
 涼子は白いコートのファーが、少し若作りし過ぎたかなあ・・と思いながら、冷たくなった手に息をかけた。
「よう!久しぶり!」
 涼子の後ろから、清原は急に声をかけてきた。
 付き合っていた時は、遅刻ばかりしていた清原が、時間通りに現れた。
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