先輩とアタシ
アタシの手を握りながら、もう片方の手で、荷物を持ち上げた。
「小夜、帰るぞ。」
『えっ‥と?あっはい。』
アタシは手を引っ張られ、歩き始めた。
「意味分かんねえ!!」
と、優人さんが叫ぶ。
「あんたもな(笑)?とりあえず、二度と小夜に近づくなよ。」
首だけ振り返って大輔先輩が、優人さんに向かって言った。
まだ立ち尽くすアタシに、行くぞっ。と言って公園から出た。
なんで大輔先輩が居るの?
助けてくれたの?
恐かったよぅっっ。
先輩の手が温かくて、急に安心する。
『ヒック‥‥ック‥グズ‥』
安心したせいか、涙が溢れ出した。
「‥‥ばーか。泣いてんなよ‥。」
先輩が、前を向いたまま、ぼそっとつぶやいた。
『ック‥‥うわあぁん‥‥』
その言葉で余計涙がこぼれた。
人通りの少ない道で、子供のように、アタシは大声を上げて泣いた。
「恐かったな‥‥?もう大丈夫だから。」
そういって、道端で先輩が抱きしめてくれた。
先輩の温かい大きな胸は、この上無いくらいアタシを安心させた。
大丈夫。
何度もそう言って、抱きしめてくれた。
恐かったのと、先輩の優しさが嬉しいのと、2つの感情が混じり合って、なかなか涙が止まらなかった。
先輩は、アタシが落ち着くまでずっと、胸を貸してくれた。
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