先輩とアタシ



アイツ泣いてるよな‥?


今すぐに抱きしめてぇよ‥。


体育館に繋がる曲がり角を、全速力で曲がると、


ドンッ


「うわっ!すみません、急いでて‥‥小夜‥」



曲がり角のすぐそこに立っていたのだろう。


オレにぶつかってしりもちをついたみたいだ。


麦茶もナンバーも散らかってしまった。


『ふぇっく‥‥‥ひぃーん』


案の定涙で濡れた顔。


「ごめんな小夜‥‥ごめんな?」


たくさんの意味のごめんを込めて小夜を抱きしめた。


『せんっ‥‥‥せんぱいぃ‥‥』



小夜の声‥久しぶりに聞いたような気がする。


昨日の帰りには聞いたのに。


「ごめんな‥お前に嫌な思いさせて‥。」


本当にごめん。


ちゃんと伝わってる?


オレの腕の中にすっぽり収まっている小さな彼女は、一生懸命に泣いている。


強く抱きしめたら、壊れてしまうんじゃないか?


泣きながら、話す小夜。


『アタシッ‥‥先輩のこと‥‥好きだから‥』


.
< 273 / 405 >

この作品をシェア

pagetop