シャボンの中の天使
「ママのバカ!」
望は、そういい放ち、庭の片隅で、大声で泣き始めた。
その小さな背中に、胸が痛む。
何やってるのよ。わたしは。
こんな小さな子を泣かして……。
「望。ごめんね。他の遊びしようよ」
小さな背中のすぐ側まで言って、声を掛ける。
だけど、返事はない。
かなしい泣き声だけが、辺りに響く。
「どうしたんだよ。望」
泣き声を聞きつけ、部屋の中から出てきたのは、わたしの父だ。
「お父さん……」
父もサンダルを履いて、望のすぐ隣まで来た。
「どうした。望。ちゃんと言ってごらん」
おじいちゃんっ子の望は、真っ赤な目を祖父に向け、しゃくりあげながら、言った。
「僕ね、シャボン玉で遊びたいけどね。ママがね。駄目だって、言うんだ」
それだけ、言って、またうわーんと泣き出す。