シャボンの中の天使


3年前。


望がお腹にいた頃だった。
たしか、妊娠8ヶ月目に入ったぐらいで……。


春の真っ只中だった。


桜の開花が各地で発表され、わたしの地域にも、ちゃんと、桜前線は忘れず、やって来てくれた。


お腹が大きくて、なかなか葉菜と遊んでやれていなかったわたしは、夫と葉菜に、桜のお花見に行くことを提案した。


お姉ちゃんになるために、一杯、我慢してくれている葉菜に、この日だけは、好きに遊ばせてやろうと思ったからだ。


「ねぇ、葉菜。明日、みんなでお弁当もって、かばさん公園にお花見行こうか?」


かばさん公園とは、わたしたちが住んでいた家から一番近い公園だった。


かばの滑り台があるから、子供たちの間では、『かばさん公園』と呼ばれている。


小さな公園だけど、植えられた十数本の桜の木がとても美しいのだ。


「行きたい!行きたい!」


「でしょ?ね、パパもいいよね?」


隣に座る夫も訊く。


「いいけど。お前、身体大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。この頃体調いいし」


それならいいけど、と夫も了承してくれた。


「葉菜ね!シャボン玉したい!」


「いいよ。いっぱい、遊ぼうね」


「うん!」

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