シャボンの中の天使
朝。
「わ~!ママ、おいしそうだね」
お弁当箱に敷き詰められた、タコさんウインナーや黄色い卵焼きを見て、葉菜が感嘆の声をあげた。
天気は有難いことに、朝から快晴。
桜と空のコントラストが美しそうだ。
「はい。お弁当完成!」
三角おにぎりを最後に詰めて、そう言うと、葉菜と夫がパチパチと拍手した。
「ママ~早く行こう!」
葉菜の目が輝いている。
「そうだね。あ、でも、洗濯物、まだ回してるから、それ干したらね」
「え~それじゃあ、夕方になっちゃうよぉ」
「そんなに、洗濯物は時間かからないわよ」
わたしは苦笑する。
「え~でも、葉菜ね。早く公園行きたい!」
拗ねたように唇をつきだす葉菜。
わたしは、困り顔で夫を見た。
夫もおんなじ顔でわたしを見てくる。
珍しく、わがままな葉菜に困惑しているのだ。
「ごめん。じゃあ、パパ。先に葉菜と公園に行っといてくれる?
わたし、洗濯物終わったら、お弁当持って追いかけるからさ」
「いいのか?大丈夫?」
「うん。そうしてあげて。葉菜いつも、我慢してくれているもんね。
今日ぐらい、わがまま聞いてあげてもいいじゃない」
「やった~!パパ早く行こ!」
飛び跳ねる葉菜。
もう、玄関目指して走っている。
「あ、葉菜。帽子ちゃんと、かぶってね?」
「は~い!」
葉菜はお気に入りの花柄の帽子をかぶって、シャボン玉セットを入れた、小さな鞄を手に持った。
「行ってきます!」
元気よく駆けていく葉菜に手をふり、わたしは、家に戻って、洗濯機の前に立った。
洗濯機は脱水をしていたので、あと数分で終わる。
洗濯物が終わったら、お弁当を鞄に詰めて、家を出よう。