シャボンの中の天使
ひらひらひらり……
赤、青、黄の細長い紙に、
この火薬臭い匂い……。
クラッカー……だ
「誕生日おめでとう!ママ」
とびっきりの望の笑顔。
まさかのサプライズに口を開けたままわたしは放心状態。
望は、手を叩きながら歌い始めた。
「はっーぴばーすでーつーゆー……はっぴーばーすでーつーゆー」
全然歌詞になってない歌声と全然歌声にあってない手拍子だけど
「はっぴーばーすでーじあーママー
はっぴーばーすでーつーゆー」
わたしの目は滲んだ。
3月4日。
そうだ。今日はわたしの誕生日だった。
「はい。これママに!」
望に画用紙を渡される。
そこには……
肌色で書かれた大きな丸とその中に黒色の丸が2つ
黒丸の下に、赤くて長い線。
まるで妖怪のような顔……
「ね?ママ美人に描いてあげたよ!」
わたしの前でドヤ顔をする望に噴き出した。
「ありがとう。望。ママ嬉しい!」
思わずしゃがみこんで、望を抱き締める。
そんなわたしの体を望は力一杯押し返す。
「まだだよ、ママ!お楽しみはこれから!ね?じいじ!」
「そうだよな!望」
キョトンとするわたしの前に、望と父は目を合わせて、合図を送りあっている。