イージーラブじゃ愛せない
シャワーの水音を聞きながらベッドにもたれかかって座り、俺は鞄から今日もらったレジュメを取り出し眺めた。
……俺と、優吾と、それから胡桃と。試験に合格したら誰から移動になっていくんだろう。
面倒くさい研修より、やっかいな試験より。1番憂鬱になるのはそれだ。ついに始まった4人がバラバラになるカウントダウン。早けりゃ来年の今頃は誰かに移動の辞令が出ている。
もしも。それが俺か胡桃だったら。
あー考えたくねー。でも考えちゃうし考えなくちゃいけないんだよな~。
もし、ふたり離れ離れになっちゃっても、俺達ちゃんとやってけんのかな。遠距離恋愛とか、大丈夫なのかな。
いくらラブくったって、恋人(多分ね)になってまだ3ヶ月。優吾たちみたいに『自信ある』って、俺達はきっとまだ胸張って言えない。言いたいけどさ。
胡桃は俺が側にいなくても他の男と寝ないでくれる?
俺はひとりぼっちになっちゃったら、どうやって寂しさを埋めたらいい?
「……はー……」
天井を仰いで湿っぽい溜息を吐き出した。
全然見えねーや。本気で分かんね、俺達が遠距離になっちゃったら、なんて。
やっぱ離れたくないな。せめて俺達も『自信ある』って言える余裕が出来るまで待って欲しい。
けど、それっていつ?
なんかもう、どう考えても憂鬱なループに入ってしまうので、俺はレジュメをもう1度鞄に押し込めるとテレビのスイッチをつけて胡桃が戻ってくるのを待った。