イージーラブじゃ愛せない


「…………胡桃?」


長すぎる沈黙に、不安になった俺が呼び掛けると。


「帰るわ」


胡桃はそう言って俺の腕から抜け出し、ベッドから立ち上がった。


「えっ!?なんで!?」


あまりに突然の行動に意味が分からない。なんで?急になんで?俺、なんかマズイこと言った?

メチャクチャ驚いて焦る俺を見ようともせず、胡桃は背を向けて黙ったまま下着を着けていく。


「なんだよ胡桃!俺なんか怒らせるようなこと言った!?」

「別に。気が変わっただけ。する事したし今夜はもう帰っていいでしょ」


……なんなの?俺、胡桃に甘えたのいけなかった?不安な気持ち素直に言ったのいけなかった?そりゃちょっと情けなかったかもしれないけどさ。


ヘコんだ。さすがにこれは。

不安でいっぱいだった未来予想図が的中の予感を増していく。こんなに側に居てもすぐに離れてしまう不可解な胡桃の気持ちを、遠距離恋愛になっても俺は繋ぎとめていられるんだろうか。
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