イージーラブじゃ愛せない
――……キツかった。
対応を終えてお客さまの家から帰る車内の中、私は髪を乱暴にかき上げ何回も重い溜息を吐いた。
オーダーカーテンは子供部屋のもので、お子さんは誕生日の今日、カーテンとベッドカバーが揃うのをとても楽しみにしていたんだとか。けれど、申し訳ないけれど対応としてはリサイズして後日届けになってしまう。
『せっかくの娘の誕生日なのに台無しだ!』
そう何度も怒鳴られたのもキツかったけれど、カーテンを楽しみにしてた娘さんの心中を思うと、それもなかなかキッツい。
何回目かの溜息を吐き捨てて窓の方を向いた私に
「あんまり気にするな、新人じゃあるまいし」
運転席の成瀬先輩がそう声を掛けてきた。
「すみません。今日はちょっと堪えました」
「もっと酷いクレーム受けた事だってあるだろ。その時だってお前淡々としてたのに」
「悪質なクレームなんか何件受けたってどうって事ないです。でも今日のは……親の愛情が痛いなあって」
私の答えに一拍置いてから、成瀬先輩は「何それ?」と返した。