イージーラブじゃ愛せない


「可愛い子供部屋でしたね。両親に『これでもか』ってぐらい愛されてるのが分かるような。完成させてあげたかったな。ベッドカバーとお揃いのピンクのカーテン、飾ってあげたかった。私のせいで台無しになっちゃった」


こんな時に、普段自分でも気付かない歪んだコンプレックスがひょっこり顔を出す。ああ、我ながら面倒くさい。

羨望、同情、責任、それらに卑屈さを足して混ぜ込むと今の気持ちが出来上がるらしい。


窓の外を眺めていると、成瀬先輩はなぜだかハザードを焚き突然車を路肩に停車させた。

そして車から降りると道端の自動販売機でジュースを買ってすぐに戻ってきてそれを私に差し出す。


「泣くなら帰ってから高倉の胸で泣けよ」


そんな台詞と共に。


「そんな事が出来るような可愛い女じゃないです。てか、泣いてないし」


受け取ったジュースは温かいピーチティー。その優しい液体を喉に流しながら、やっぱり人に奢られるモノは美味しいな、と久々に思った。

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