イージーラブじゃ愛せない
○昼休みトラジェディー○

○昼休みトラジェディー○



――あれは、ジョージとまだフツーの友達だった頃。


風邪気味だった私は出勤して仕事をしてるうちに熱が出てしまい、やっと勤務が終わる頃にはすっかりへばってしまっていた。


ヤバい、これ結構熱あるな。帰りの電車で倒れちゃったどうしよう。タクシーで帰ろうかな。

タイムカードを押しながら、赤い顔で寒気に震えてそんな事を考えていたら。


『柴木ちゃん具合悪いの!?ひでえ顔色!俺、今日車で来てるから家まで乗せてったげるよ!』


事務所で偶然会ったジョージがそう言って、本当に私を家まで車で送り届けてくれた。


……あの時は本当にありがたかったな。凄く助かったし、ジョージの事イイやつだって、ちゃんと素直に思えた。


けれど。

熱が下がってまともに頭が働くようになった頃、私はふと思い出してしまったんだ。どうして店のすぐ近くに住むジョージが、あの日わざわざ車で出勤してたのかって。


『今日は仕事終わったらデートなんだよね~。夜景観に行ってそのままお泊りコース。いいっしょ~』


昼休みの社食で、ニヤニヤ嬉しそうにそんな事言ってたの思い出しちゃって。



…………私はあの時。

彼女との約束を差し置いてまで、友達だった私を送ってくれたジョージの事をどう思ったんだっけ?


そして。

どうして私は今頃そんな事を思い出してるんだろう?

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