イージーラブじゃ愛せない



7月。すっかり夏の気候に染まった毎日に、私はちょっと夏バテ気味だった。

だから今日も。昼休みの食堂で私のトレーに乗った冷やし中華だけは、一向に量が減っていかない。


「柴木ちゃん、食べないの?」


紅しょうがをチミチミと口に運んでいただけの私に気付き、りんが心配そうに声を掛けてきた。


「昨日も結構残してたよね」


同じように風間くんも、私の手元の減らない食事を見て心配そうに口を開く。


「急に暑くなってきたからさ、ちょっとバテ気味で」


箸を置いてコップの水を飲んだ私に、向かいの席のジョージが

「食べないと余計にバテるよ?なんでもいいから腹入れなって~」

と声を掛け

「あ、私、夏バテに効くサプリ持ってますよ」

その隣に座る須藤さんが鞄からオレンジのピルシートを出して私に差し出してくれた。

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