イージーラブじゃ愛せない


催事コーナーに戻り、運んできたシェルフを丁寧に降ろしながら、俺はふと、さっきの優吾の台詞を思い出した。


――胡桃の引越しの理由?

思い出して、俺の眉間に軽く皺が寄る。


なんで優吾が知ってんの?まあ、優吾が知ってるってより、りんりんから聞いたんだろうけどさ。でも、俺は聞かされてないよ?何度か尋ねたけど『色々あんの』とか濁されちゃって。

これも嫉妬だろうか。だって、優吾とりんりんは知ってるのに、協力する俺と茜ちゃんは知らないなんて、なんか変じゃね?おかしくね?


相変わらず胡桃の本心はよく分からない。

けれど、その嫉妬めいた想いは俺の中にちょっとだけ燻り続けて。

どこかスッキリしないまま、次の休日を迎えてしまった。





「幕張駅から徒歩5分。南向き2階の1DK。ベランダが少し狭いのと築年数が12年なのがネックですけど、それでもこの条件で42000円は破格だと思います。お風呂とトイレも別だし」


紹介してもらった物件を見に行った帰り。俺と胡桃と茜ちゃんはカフェで休憩をとりながら改めてアパートの情報を確認した。


「築12年っつっても、リフォーム入ってすげー綺麗だったじゃん。ほんと超お得物件だよ。いいなー俺がここに引っ越したいよ」


マジで羨ましいくらい。自分事では無いとは言え、そんないい物件を紹介してくれた茜ちゃんの叔父さんに心から感謝する。
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