イージーラブじゃ愛せない
あまりに突拍子無い胡桃の言葉に、俺も茜ちゃんも全く意味が分からず、思いっきりポカンとしてしまった。
そんな俺達を残して、胡桃は頼んだドリンク代と思わしき千円札をテーブルに置くと、鞄を持ちそのままドアへと歩いて行ってしまった。
突然の出来事に、頭が追いつかない。
しばらくポカンとしていたけど、じわじわと胡桃の言った意味が頭に入ってきて、俺は勢い良く席を立ち上がる。
「茜ちゃんごめん!なんか胡桃、機嫌悪いみたい。あ、でもすぐ治るからさ。俺ちょっと行ってくるね!」
俺の言葉でようやく事態が飲み込めたのか、茜ちゃんが不安げな顔でコクリと頷く。あー本当に申し訳ない。休日まで使って付き合ってくれたのに、突然こんな事になっちゃって。
茜ちゃんへの申し訳なさでキリキリ胸を痛めながら、俺は店の外へ出た胡桃を走って追いかけた。
さすがにこれは無いよ、胡桃?俺だけだったら幾らワガママ言っても構わないけどさ、今回は違うっしょ?
真夏の炎天下の下、熱いアスファルトを早足で歩く胡桃の後姿を見つけ、俺は駆け寄ると強くその肩を掴んだ。
「胡桃!ちょっと待ってよ!」
けれど胡桃は振り返り俺の顔を睨んでから、掴んだ手を思いっきり振り払う。
恐っ。不機嫌マックスじゃん。でもビビってる場合じゃない。俺も引かない。