イージーラブじゃ愛せない
「結構です」
即座にお断りした私に、成瀬先輩は
「ほんと可愛くない」
と、ムカつくほど嬉しそうに笑った。けれど、すぐにその笑いを顔から消すと
「でも、可愛くないのには理由があるのも、分かってきた」
私の耳元に顔を寄せて囁くように告げる。
「素直にへこんでた時の柴木は可愛かったよ。お前、本当はものすごく淋しがりやだろ」
「は?」
あまりに馬鹿馬鹿しい成瀬先輩の発言の数々に、真面目に取り合う気のなくなった私は出来上がったプレートを持ち、呆れた溜息を吐き捨てて立ち去ろうとした。
なのに成瀬先輩は。
「今、俺フリーだから。泣きたくなったら今度は胸貸してやるよ」
最後に明るい声でそう言って、去りかけた私の背中をポンと叩いた。
なに勘違いしてるんだか。
そう呆れながらも、いちいちナンパ男を探しにいくよりは身近にいつでもセックス出来る相手がいるのはラクだな。なんて思った私は、自分の節操の無さにプレートを設置しながらひとり苦笑した。