イージーラブじゃ愛せない
●さよならイージーラブ●

●さよならイージーラブ●



「……くん、……ジョージくん」

「えっ?」


茜ちゃんに顔を覗き込まれながら呼びかけられて、俺はボケッとしていた思考を現実に引き戻された。

ヤバイ、俺どんだけボケてんだ。仕事中だっつーの。星野さんに見つからなくて良かったー。


「あ、ゴメン。ちょっとボーっとしてた。何?どーかした?」


軽く首を回し気を取り直してヘラリと笑い掛けると、茜ちゃんは少し渋い表情を浮かべる。


「うん、レザーオイルの在庫どこにあるか聞きたかっただけなんだけど……なんか……ジョージくん元気ないね」

「そう?んな事ないよ」


なるべく素知らぬ顔をして答え、俺は売り場の小さなカウンターから新しいオイルを取り出した。

真新しいオイルスプレーのビニールをペリペリと剥がし、茜ちゃんに手渡す。

「ソファーに使うんだよね?これ本革用だから、チェアの合皮には使わないように気をつけてね」


なるべくがんばって気持ちを仕事にシフトチェンジしたと云うのに

「……柴木さんと仲直りしてないの?」

茜ちゃんはあっさりとそれを戻してしまった。
 
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