イージーラブじゃ愛せない
3日前、朝の歩道であれだけやらかしちゃったんだから仕方ないんだけどさ。俺と胡桃の修羅場はこの職場で結構ウワサになってしまっていた。
そしてそれは当然茜ちゃんの耳にも入って……どうやら責任を感じてしまってるらしい。
「んー……まあ、ね」
余計な心配かけたくないし、本当は強がって『大丈夫、少ししたら胡桃の機嫌も治るから』なんて笑い飛ばしたいところだけど。
ちょっとさすがに今回は無理。
本音を言えば仕事に来るのもしんどいよ。部屋で布団かぶって腐ってたい。もしくは酒飲んで馬鹿みたいに遊んで脳みそ空っぽにしたい。
だって本当思い出したくもない。3日前の朝、前の日と同じ服で出勤してきた胡桃の後姿を見つけたときの衝撃。
冗談抜きで目の前真っ暗になったよ。
それまで俺は心の底で、まだ大丈夫ってなんとなく思ってた。別れを切り出されてもまだ、ちゃんと話し合えば大丈夫って。きっと元に戻れるって。
でも。
胡桃、他の男に抱かれちゃった。あっさりと。
俺がすげー悩んでる間に、すげー不安で眠れない夜に。胡桃は他の男とキスしてセックスしてたんだってさ。
嫌でも突きつけられた、全部。
もう俺たち戻れないって事も、俺の気持ち何ひとつ届いてなかったんだって事も。