イージーラブじゃ愛せない
茜ちゃんは俺の言葉を聞いてしばらく黙っていたけど、やがてふっと張り詰めていた息を吐き出すと
「……ジョージくん、なんか変わったね」
と、泣き出しそうな顔で笑った。
「んーん。全然変わってないよ。1年前と同じ、情けないチャラ男のまんま。だから今、変わろうとして頑張ってるところなの」
助手席に手を伸ばし慰めるように髪を撫でながら笑うと、茜ちゃんもギュッと目を細めて
「だったら、こういう事もしない方がいいよ」
と、肩を竦めて笑いながら俺の手を払った。
「だよね。ホント俺ってチャらいのが骨の髄まで染みついてる」
「ふふふ、私はジョージくんのそういうとこ、好きだったけどね」
茜ちゃんは本当にいい子だ。こんな馬鹿な男とイージーな恋してくれて、ショボくれてたら慰めようとしてくれて。
「なんか……色々ゴメン。本当に俺、馬鹿だからさ」
「いいよ。それより頑張って脱チャラ男してね。来年もまた派遣に来るからさ、イイ男に成長してるの楽しみにしてる」
「うん。また来年、会おうね」
そんな約束を笑顔で交わしてくれた茜ちゃんは、8月31日付けで派遣期間を終了した。
改めて、独りで向き合う失恋の痕。
二週間後には最後の研修と試験が始まり、またひとつ俺達の解散カウントダウンが進んでいく。
本気の淋しさと向き合う、秋が来る。