イージーラブじゃ愛せない
「……いいよ、ジョージだって寒いでしょ」
上着を掛けた相手を振り向きそう返す。なんだか、モゴモゴと声が小さくなってしまった。
「俺はへーき。柴木ちゃん寒がりなんだから着てな」
……うん。そう。私、すっごい寒がりなんだ。なのにいつもちゃんと対策してなくて。
「……ありがと。借りとく」
そんな無防備な私にマフラープレゼントしてくれたり、バスタブにお湯張って『ちゃんと足あっためな』って言ってくれたり、やたらおせっかいを焼いてくれた人が去年の冬はいたっけ。
「明日、会社持ってきてくれればいいから。家まで着てっちゃっていーよ」
そう言ってジョージはヘラリと笑うと、なんでも無いように歩道を歩き出した。
……そういえば、2回目の告白された時も上着貸してもらったな。
なんか私、ジョージに温めてもらってばっかいる気がする。今も昔も、関係がどんな風に変わっても。
ジョージより少し遅れて歩き出した私は、彼の背中を眺めながら足を進めた。
もう腕を回すことは無い背中。それを見ながら小さく肩を竦めると、借りたジャケットからよく知ったシトラスの香りがした。