イージーラブじゃ愛せない
アパートに帰り着き部屋の鍵を開けていると
「遅かったな」
成瀬先輩が隣の部屋からヒョコリと顔を出した。
「なんですか?今日は別に何も頼んでない筈ですけど」
「本当に驚くほどお前可愛くないな」
帰って来るなり何でそんなこと言われなくちゃいけない。ムカついたけれど面倒くさいので、構わず部屋へ入ろうとした。すると。
「ちょっと来な」
何を企んでいるのか、成瀬先輩はコイコイと私に向かって手招きするではないか。
いぶかしげな表情のまま無言で固まっていると、成瀬先輩は玄関を出てこちらへやって来て私の正面に立って言った。
「お前、リーダー試験の(1)受かったんだろう?せっかく祝ってやろうと思って待ってたのに」
「あれ、知ってたんですか」
「同じ部門なんだから当たり前だろ」
そうして私の頭を細い指でクシャリと乱暴に撫でると
「お祝いにいいワイン飲ませてやるよ。その上着脱いだら俺の部屋に来な」
成瀬先輩は背を向けて自分の部屋へ戻っていった。