イージーラブじゃ愛せない
ご馳走してくれると言うのだから、ここはありがたく誘いを受けようではないか。と、私は言われた通り着ていた上着を自分の部屋のハンガーに掛けると隣の成瀬先輩の部屋にお邪魔した。
「いいワインって何ですか?ロマネ・コンティ?モンラッシェ?シャルルマーニュ?」
「お前、俺を破産させる気か」
キッチンから続くフローリングの部屋。どうやらリビング代わりに使われてるらしいその部屋のクッションに腰を降ろすと、成瀬先輩が赤ワインのボトルとワイングラスをふたつ持ってやって来た。
「それでもブルゴーニュのビンテージだぞ。ありがたく飲めよ」
超高級では無いけれどそれなりに良いワインのようで、グラスに赤い液体が注がれると芳醇な香りがフワリと鼻につく。
ふたつのグラスに注ぎ終わるのを待ってから
「それじゃあ頂きます」
と、グラスを軽く持ち上げると
「柴木の試験(1)と俺の最終試験の合格に、乾杯」
成瀬先輩は私の目を丸くさせるような事を言った。