イージーラブじゃ愛せない
「え?成瀬先輩も試験受けてたんですか?」
「お前なあ。俺も今年度になってから何回も研修でいなかっただろうが」
「あーそういえば。リーダーがそんな事言ってましたね」
間の抜けた私の言葉に、成瀬先輩は呆れた表情をしながら何か言いたそうに眉を顰めた。それを見なかった事にして、私はグラスに口を付ける。うん、濃厚で美味しい。
「柴木は俺を祝う気は無いワケ?」
同じくワインをぐーっと口に流し込んでから、成瀬先輩はこちらを見据えて言った。面倒くさい予感がする。
「後日何か考えます。ケーキかなんか――」
逸らした顔に手を当てられたと思ったら、強引に成瀬先輩の方を向かされて、そのまま唇を重ねられた。
結局これか、と思いながら私はキスをされたまま手に持っていたグラスを落とさないようにテーブルへ置いた。
抵抗しないのをいい事に、ふいうちにしては結構長く口の中をまさぐられる。そうして、いやらしくてネチっこいキスから解放されると、私は
「これでお祝い済みましたよね。私、帰ります」
唾液で濡れた唇を手の甲で拭ってから立ち上がろうとした。けれど。
「帰さないよ」
立ち上がりかけた身体はアンバランスな姿勢のまま成瀬先輩にゆっくりと、けれど強く押し倒されてしまった。