イージーラブじゃ愛せない
頭痛い。フローリングで押し倒すな。
そんな不満を籠めて、私の身体を床に押し付けてる成瀬先輩をキツく睨みつける。
「離して下さい。身体を代価にするのは辞めたって言ってるじゃないですか」
「お前、まだそんな事言うの?まさか本気じゃないよな」
「は?」
「俺が本気で謝礼やお祝いを身体で要求するような餓えた男だと思ってるのか?」
今している事はまさしくソレとしか考えられないんだけど。この期に及んで何言ってるんだこの先輩は。
押し倒されたまんまの態勢で呆れた表情をあらわにしたけれど、成瀬先輩はちっとも動じず私を見つめ返して口を開いた。
「俺は好きでもない女にわざわざ自分の部屋の隣を紹介したり、引越しを手伝ってやったりしない。そんぐらい分かってんだろう?」
…………えー。
1年前にあんなに私のこと蔑んでたくせに。どうしちゃったのかね、この人は。
疑問と疑惑の目を向けた私に、成瀬先輩は手首を掴んでいた手を離すと、細い指でゆるりと頬を撫でてきた。