イージーラブじゃ愛せない
「お前さ、人の仕事フォローしても絶対自分から言わないだろ」
突然話し始められた内容に、意味が分からずキョトンとしてしまったが、成瀬先輩は構わず続きを紡ぐ。
「そういう姿が最初はすごい謙虚に見えてさ、あー柴木って真面目でいい子なんだなって惚れたんだ」
うわ、私を謙虚でいい子とか。見る目ないなー。とは心底思ったけれど口には出さないでおいてあげた。
「それがいざ告白したらあれだ。あん時は騙された気がして本当に腹立ったよ」
「勝手に勘違いされて腹立てられても」
さすがに今回は言い返す。だってなんという迷惑な憤慨。
「分かってる。あの時は悪かった。……けど、段々お前のそういう姿が謙虚じゃなくて“自分の評価”に感心が無いだけだって気付いてから、また惹かれはじめた」
「…………」
……何言ってるんだろ、この人。分かった風なこと言っちゃって。
ゆるゆると指先だけで頬を撫でていたものが、手の平全体で包むように変わった。
「離して下さい。帰りたい」
上に覆いかぶさっていた身体を退けようと手で押すも、成瀬先輩はそれを許さない。
「自分の評価に関心がないのも、簡単に男と寝るほど自分を大事にしないのも、どう思われようと人を平気で突っぱねるのも、可愛くないのには全部理由があるんだろ?」
何言ってんのこの人。馬鹿じゃない。