イージーラブじゃ愛せない
「柴木、俺と付き合え。俺ならお前をちゃんと大事にしてやるから」
「意味が分かんない。やめて、離して」
起き掛けた身体を、強く抱きしめられてしまった。その手が何処かあやすように私の背を撫で、やがて後ろからカットソーを捲くっていく。素肌の背中に触れた手の感触にゾクリと冷たい熱が駆け上った。
「本当にやだってば……!もう寝ないって決めたんだから、馬鹿なことするとりんを泣かせちゃうんだから……!」
一生懸命成瀬先輩の身体を押し返しながら言うと、背中に触れていた手がふと離された。驚いて顔を上げると、少し距離が開いたことで成瀬先輩がまっすぐに私の顔を見つめてくる。
「自分の価値を人に委ねるな。俺を受け入れる事が今のお前のプラスになるかどうか、西島じゃない、柴木がちゃんと考えろ」
……何それ。意味が分かんない。そんなお説教される筋合い無い。
大体言ってること分かんないし。
りんは大切な友達なんだから泣かせたくないって、間違ってないでしょ。
だって。だって私は本当は自分の身体なんかどうだっていいんだから。
だって。
だって私はつまんない人間じゃん。
こんなつまんない心も身体も別にどうなったっていいし。
そんな私に“価値”だなんて。ちゃんちゃら可笑しいっての。