イージーラブじゃ愛せない


「ごめんね」


謝りながら紅茶のカップを差し出すと、胡桃は不機嫌そうな顔をしながら「何が?」とそれを受け取った。


「『友達+セックス』なんて、曖昧な関係でいさせた事。ずっと謝りたかった」


俺の言葉に、胡桃は今までに見せたことのない驚きの表情を浮かべる。


「なんでジョージが謝んの?それは私の決めた事じゃん」

「柴木ちゃんがそうするしかない状況を作ってたのは俺でしょ?」


胡桃が『恋人』って関係に踏み出せない状況を作っていたのは間違いなく俺だから。

何が『胡桃は照れ屋だから』だよな。そんな浅はかな思い込みでヘラヘラしてた自分をぶん殴りたいよ本当。


「全然頼れないし、チャラいし、信頼無いし、そんな男を恋人なんかに出来ないよね。そんな事も気付かずひとりで浮かれてヘラヘラして、本当にごめん」


胡桃に向かってまっすぐ頭を下げた目に映ったのは、紅茶のカップを持って小さく震えてる華奢な手だった。

その手に触れて包んであげたくなるのを、俺はグッと堪える。


「フラれてひとりぼっちになって頭んなか真っ白になって、そんでよーやく色々考えられるようになったんだ。そしたら俺、全然柴木ちゃんのこと考えてあげられてなかったなーって」


頭を上げて見れば、胡桃はちゃんとまっすぐに俺を見つめている。唇をかみしめ、なんとも言えない表情をしながら。
 
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