イージーラブじゃ愛せない
「自惚れんな、馬鹿。私はジョージのこと好きじゃないし受けとめてもらいたいとも思わない。あんたには友達以上の事は望まない」
突き放す冷たい台詞とは裏腹に、その声は涙に詰まって鼻声だった。
くっと口角を上げクールに笑ってみせる唇とは対照的に、瞳には今にもこぼれそうな涙の膜が張っている。
「……意地っ張り」
思わず苦笑を浮かべると、胡桃は俺の頭にチョップを落としてから玄関のドアを開けた。
その背中に最後の言葉を投げかける。
「好きだよ、柴木ちゃん。これからもずっと」
その気持ちにいつ返事がかえってくるかなんて分かんね。
でも別に構わないよ。俺の片思いが続くだけだし。
意地っ張りな柴木胡桃に本気で惚れちゃったんだもん。遠回りも空回りも覚悟の上ってゆーか。それまでは何年経とうが友達でいるよ。
じーさんばーさんになってからある日突然『私も好き』なんて素直になられるのも、それはそれで面白いかもね。