イージーラブじゃ愛せない
しかも。
「何言ってんの柴木ちゃん!!今日会わなきゃいつ自分の気持ち伝えんの!?ラストチャンスなんだよ!!」
りんはやっぱり私に何か言わせようとしてるし。
「だからー、今更言ったってどーしょうもないじゃん。やっぱ私行くのヤダ。行っても後悔しか残んない気がする」
「行かない方が絶対後悔する!!」
「行く方が後悔する。例え私が気持ちぶっちゃけたって、もうお別れじゃん。私たちが遠距離恋愛なんか出来ると思う?絶対無理」
「無理じゃない!なんで始める前にあきらめるの!?」
「あーもー。私たちはりんと風間くんとは違うの。お互い馬鹿なの。りんだって言ってたじゃん、馬鹿だって。上手くいくはず無いの、馬鹿だから」
「最初からあきらめる方が大馬鹿だ!柴木ちゃんの馬鹿!意気地なし!」
「意気地なしで結構。どうせ私はりんみたいに強くないし。もう放っておいてよ!」
「ほっとけるか!それに誰が強いって!?私だって優吾の時に泣いて喚いて縋ったよ!だから最後は笑顔で送り出せたんじゃん!」
ヒートアップしてきた私たちの口論に、周囲の人達が注目し始める。けれど、りんはお構いなしに両手で壷を抱えたまま私に噛み付かんばかりに迫ってくる。そしてついに。
「なんでカッコつけんの!?みっともなくジョージに縋り付けばいいじゃん!『離れたくない』って!『福井から毎日会いに来て』って!そんな事も言わないうちにあきらめんな!ここで……ここであきらめたら……絶対許さないから!弱虫な柴木ちゃんなんか大っ嫌いだ!行かなかったら、絶交だからね!!」
りんは物凄く悔しそうな表情をして泣き出してしまった。壷を持って手が塞がってるせいで拭えない涙が、りんの丸っこい輪郭を伝ってポロポロと落ちていく。