イージーラブじゃ愛せない
「……りん……」
焦って慰めようと手を伸ばした私を、りんはドンと壷で押し返す。
「行って!ジョージのとこ行って!私行かない、ふたりきりにしてあげるから全部ぶっちゃけて来て!」
「ええっ!?」
更にハードルの上がった要求に困惑するも
「行って来い柴木胡桃!!」
大粒の涙を零しながらまっすぐに見つめて贈られた叱咤に――自分の中で竦んでいた心が動いた気がした。
「……りんの馬鹿、後で慰めてよね。今夜の【もぎり】、りんの奢りだかんね」
瞳をまっすぐ見つめ返し口角を上げて笑うと、りんはもっと涙を零しながら思いっきりニィッと目を細めて大きく頷いた。
「頑張れ柴木ちゃん!!」
壷を持ったまま泣いて笑った顔で私の背にエールを送る親友は、傍目にはなかなかトリッキーな姿だっただろう。
けれど、それは私の背中を力いっぱい突き飛ばす世界一力強い激励の姿で。
――ありがと、りん。
親友のまっすぐな眼差しが、私の足をジョージの元へと走らせた。