イージーラブじゃ愛せない
ジョージとの待ち合わせは幕張駅前。そこから新幹線に乗る東京駅まで見送ってあげる予定だ。
駅まで足を進めながら、自分の鼓動が張り裂けそうに高鳴っていく。
なんだこれ。なんで私こんなに緊張してんの、馬鹿みたい。
りんも、風間くんも、成瀬先輩までもが背中を押してくれたというのに、まだ怖いと竦んでしまう自分ってどんだけ臆病なんだと改めてウンザリする。
段々と駅へ向かう足の速度が落ちていく中、ふとある建物が目に入った。
……時間はまだある。買い物の予定を繰り上げてきちゃったんだから、あと30分は平気だ。
私はぎゅっと拳を握りしめると、建物のガラスに映った臆病な自分を睨みつけてから中に入った。
――最後に、自分の背中を押すのは自分だ。
30分後。建物から出た私は時計を確認しながら急いで駅へと駆け出す。
ギリギリになっちゃった。餞別買う時間なくなっちゃったけど、代わりに私の言いたい事全部くれてやる。覚悟しろジョージ。
真夏並みの太陽の下、私は軽快に走り続ける。
生まれて初めて短く切り揃えた髪が、首筋で揺れてくすぐったいと思いながら。