イージーラブじゃ愛せない
「……おまたせ」
走った甲斐があって時間はジャスト。駅の入り口前に立っていたジョージに声を掛けると、ヤツはこちらを見て目茶苦茶ビックリした顔をしていた。
「うわ!一瞬分かんなかった!どしたの柴木ちゃん、すげーイメチェン」
「……変……?」
あんまりにもジョージが驚くもんだから、ちょっと不安になる。
だって、子供の頃からずっとロングヘアーだった髪。ショートボブにしたのなんて生まれて初めてだし。
でも、変えたかった。
本当に土壇場でなんだけど、それでも変わりたいと思ったから。
臆病なくせに、こんな自分にウンザリしてるくせに、変わろうとしなかった自分を切り捨てたかった。
我ながら髪型ごときで変わるなんて安直だと思うけどさ。
でも、最後は自分で自分の背中を押してやりたかったのよ。
ジョージは不安そうな表情をした私にヘラリと優しく微笑むと
「似合ってる。すげー可愛いよ」
そっと手を伸ばして、私の頬で揺れる髪束を撫ぜた。