イージーラブじゃ愛せない
さすがに俺、ぶち切れた。
「ねーよ!なんだよそれ!俺すげー大マジメに告ったのに、なんなんだよそれ!」
胡桃の両肩を掴んで大声で責め立てると、歩道を歩く通勤途中の人たちが一斉にこちらに注目した。やべ、同じ店のやつらも結構いるのに。
胡桃は怒鳴った俺に一瞬目を丸くして驚いたけど、すぐにふっと冷笑を浮かべて
「あんたの言うこと、チャラ過ぎて信じらんない」
背筋が冷たくなるほどクールに言い放った。
言葉を失くしてしまった俺に、胡桃は自分の指を折って数えながら
「私が知ってるだけで5回かな。ジョージの『大マジメな恋』。いっつも『本気だから、マジだから』って言ってるよね。3ヶ月以上続かないけど」
と可笑しそうにクスクスと笑う。その姿に細い肩を掴んでる俺の手はどんどん冷たくなっていった。
そして、最後にとびっきりの作り笑いをすると
「ま、いっか。イージーラブ最短終了の記録更新おめでとう。つーわけで胡桃って呼ばないでね」
肩に置かれた俺の手を振り払って背を向け歩き出した。