イージーラブじゃ愛せない
「マジで?」
いきなり酷い事を言った私に、ジョージは困ったように笑ったけど、目を逸らすことは無かった。だから、そのまま言葉を紡ぎ続ける。
「あの夜がなければ、こんなグチャグチャした気持ちにならなかった。仲のいい友達のまま今日だって笑って見送れたのに。ムカつく。あんたなんかチャラいくせに、ペラいくせに、恋人になんか絶対なりたくなかったのに」
我ながらひっどい。なんで罵ってんだこの期に及んで。うーん、でも仕方ない。素直な気持ちには違いないし。
「なのに、こんなに好きにさせて腹が立つ。あんた私の事甘やかし過ぎなんだけど。そんなの惚れちゃうに決まってんじゃん。あんなに優しくされて、すっごい嬉しくて、悔しいぐらい好きになっちゃって。あー本当に腹が立つ」
理不尽な文句だらけなのに、ジョージはそれでもきちんと聞いてくれてる。ちゃんと、向き合ってくれてる。
どっかで鳴いてる蝉の声が邪魔だ。今、一生懸命話してるんだから誰も邪魔しないで欲しい。一生懸命伝えたくて頑張ってるんだから。
「……なのに、なんで他の女の子に優しくするワケ?馬鹿じゃないの?私のこと大切なら私にだけ優しくして欲しいんだけど。すっごいムカついた。あと私、自分の家族苦手なんだよね。そんぐらい察して欲しいんだけど」
あの日とよく似た強い日差しが、泣きたかった気持ちを思い出させる。あの時、本当は泣いて引っ叩いてやりたかった。
「すごいムカついた。……泣きたかった」
潤んできてしまった瞳を隠すように俯いたら、ジョージが頭を抱き寄せてうっすい胸板で包んでくれた。そして
「ごめん」
1年遅れの『ごめん』を、やっと届けてくれた。