イージーラブじゃ愛せない
あれは一昨年のクリスマス。
その時恋人のいなかった俺は空しいクリスマスを迎えたくなくて、慌ててイージーな彼女を作ったんだっけ。
けど、なんとイブの日に彼女にフラれ、もんのすごく落ち込んでた俺を慰めながら一緒にメシを食ってくれたのが……友達の胡桃だった。
『クリスマスにこーやって一緒にご飯が食べられる友達がいるってのも、実はわりとハッピーだと私は思うんだよね』
今でもすげーよく覚えてるよ。形のいい唇をニッと微笑ませて言った胡桃の台詞。
フラれて情けなくてショボくれてた俺に、そんな事を言ってくれた胡桃のこと。俺は一生大切な友達にしようって、そのとき思ったんだ。
と、同時に。この頃から俺のイージーラブは始まった。
日に日に募っていく胡桃への想いを発散させるように。行き場の無くなった恋心を持て余すように。
とにかくお手軽で甘っちょろい恋をして、俺はどこか胡桃との関係に線を引きたかったんだ。お前は友達なんだからこっちには入ってくるなよ、って。
結局。全部、全部、俺の臆病さが招いた結果。
大切すぎる柴木胡桃を友達というラインに留めて置くための、イージーラブだったんだ。