イージーラブじゃ愛せない
PM9時半。仕事の終わった胡桃が「ただいまー」とくたびれた様子で帰ってくる。
「おかえり~、お疲れさん。晩飯出来てるよ」
出迎えた俺のエプロン姿を見て、胡桃が目を真ん丸くしてから爆笑した。
「あははは!ジョージ新妻みたい、甲斐甲斐しい~」
「そう、今日は俺が可愛い奥さんだから。さ、ほら座って座って」
胡桃の肩をぐいぐいと押し、キッチンのテーブルに着かせる。そして、ふたり分のカレーを綺麗に盛り付けてからそれをテーブルに運んだ。そしてまた胡桃爆笑。
「あはははは!なんで人参がハートなの!可笑しすぎる~」
「可愛いっしょ。頑張って切ったの。俺、女子力高くね?」
「やー驚いたよ。あんた料理全然出来ないかと思ってたのに、やるじゃん」
「まーね。これからは男も女子力の時代ですから」
ふたり笑ってそんな会話を交わしてから、胡桃が
「じゃあ早速。いただきまーす」
と手を合わせカレーをスプーンで掬った。
「どう?美味い?ジョージ特製愛情カレー」
けれど。『美味しい』の言葉を期待して覗き込んだ胡桃の顔が、みるみるしかめっ面になっていく。