イージーラブじゃ愛せない
もう奢りに釣られるのはやめよう。
あれから気まずい雰囲気で食べた定食は全然味を感じられなくて、私は例え奢りでもこんな美味しくない食事があるのかと初めて知った。
そういえば、成瀬先輩とのきっかけもフレンチの奢りだったっけ。なんか奢られて後悔ばっかだな。あーもう本当に信条改めよう。
そもそも、なんでジョージは私とご飯食べようなんて気になったんだろう。本当にタフだよ。気まずくなるの当たり前じゃん。
色々とモヤモヤした気持ちで始まる午後の業務。
入荷された新商品を展示しようと倉庫に脚立を取りに行った私は、そこで不穏な視線に気が付いた。
在庫管理や配送準備で大勢の人が慌しく行き交う大型倉庫。その奥で男性従業員がふたり、こちらを見てニヤニヤしている。
……誰だっけ。あんまり知らない人だけど。確か、キッチン部門の人だったような気がする。
見られている事に気付いた私が顔をそちらに向けると、彼らも気が付いたようで不適な笑みを浮かべたままこちらへ近付いてきた。