イージーラブじゃ愛せない
波風をたてずに後腐れなくこの場を収めるのは難しい。先輩の顔を潰さずに引いてもらう方法は、これしかない。
「すいません。隠してたけど実はその子、俺の彼女なんスよ」
この場で1番驚いた顔をしていたのは胡桃だった。まあ、しょうがない。
「は?この女、先週成瀬と寝たって言ってたぞ」
「知ってます。俺とケンカして自棄になって先輩と寝ちゃったって。成瀬先輩にも迷惑かけたって反省してるんで、勘弁してやって下さい」
俺の言葉に、三沢さんと小池さんは顔を見合わせてから、掴んでいた胡桃の腕をパッと離した。
女好きの男は、仲間同士での義理はちゃんと立ててくれる場合が多い。仲間同士で揉めると身動き取り辛くなるもんなー。
「くっだらねえ。自分の女くらいちゃんと管理しとけよ、高倉」
「はい、すんません」
馬鹿馬鹿しいと呆れた表情で、三沢さんたちはダルそうにその場を去って行った。
なんとか先輩たちの顔を潰さず収められた事に俺はホッと胸を撫で下ろす。
けれど。
「なんで助けんの。アホ」
約一名、気の済んでない人物が俺を睨んでいた。