イージーラブじゃ愛せない
「それ、俺の台詞。悪いけど言わせてもらうよ。柴木ちゃんのアホ」
「しゃしゃってくんなバカ。誰があんたの彼女よ」
「あーやって収めるしかねえじゃん。つか、心配するなって散々言っといて何だよ。すげー危ない事になってんじゃん」
「別に。断ればいいだけだし」
「断れると思ってんの?柴木ちゃん男舐めすぎ」
俺の言葉に、胡桃の表情が一層キツくなってこちらを睨み上げた。
けど、俺も目を逸らさない。
悪いけど今回は本当に俺怒ってるから、引かないよ。
しばらくお互い睨みあった後、視線を先に逸らせたのは胡桃の方だった。
「……面倒くさい。こういうトラブルも、あんたの事も。私、男に生まれれば良かった」
ヤケクソなため息を投げ捨てて、胡桃は背を向けるとガシャガシャと脚立を鳴らしながら去って行った。
その背中を見ながら俺も思う。胡桃が男だったら、確かにラクだったなって。
なんの問題もなく、ヒヤヒヤもハラハラもしないで友達でいられて。
けれどもう、境界線越えちゃったこんな気持ち。今さら“ただの友達だったら”なんて、残念ながら思えないやね。