イージーラブじゃ愛せない


あー、やっぱそうだよな。優吾は男だし、目を掛けられてるともなれば受けないワケが無い。


「私は……受けないよ」


次いでそう言い切ったのは、優吾の隣で複雑な表情を浮かべてるりんりんだった。


「私はリーダーとか管理職とか、人の上に立つのは向いてないし。移動したら部門も変わるかもしれないし。ずっと販売でやっていきたいから、研修も試験も受けない」


いつも明る過ぎるくらい明るいりんりんの声が、いつにもなく張り詰めてる。それはきっと、その未来が俺以上に寂しいものと分かっているからだ。

それでもキッパリと『研修を受けない』と言い切ったりんりんの気持ちがもっと知りたくて、俺は無神経にも聞いてしまう。


「優吾と離れるの寂しくね?」

「寂しいよ!決まってんじゃん!」


予想通りの答えは間髪入れずに帰ってきた。


「優吾と離れたら私寂しくて寂しくて死にかねないよ!でも、研修受けたって同じ店に移動になるワケじゃないし。だからって優吾の将来潰してまで『研修受けないでずっとこの店にいよう』なんて言えるワケないじゃん」


あ、ヤバイ。りんりんの目がウルウルしてきてる。


「寂しいけど、死ぬほど寂しいけど、でも私自信あるから。優吾とならお店が変わったって遠距離恋愛になったって、絶対に気持ち変わらないって。今と同じ恋人でいられるって、私すんごい自信あるから」

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