イージーラブじゃ愛せない


「優吾とジョージ、魚釣れてるといいねー」


鏡にツヤツヤの顔を映し化粧水をはたくりんの背中を、伏せた瞳に羨望を籠めて見る。


本当は私、今日は来たくなかったんだ。

ジョージと気まずくてさ。4人でいる時はいいんだけど、何かのタイミングであいつとふたりきりになる事すごく警戒してる。


なんて、今日のレジャーを本当に楽しみにしていたりんには言える筈がない。


りんには分かんないよね。大切なはずの友達をこんなにわずらわしく思う気持ち。もはや友達かどうかも怪しい状態なんだけどさ。


「柴木ちゃん?」


すっかり淀んでしまった思考が、りんに呼びかけられてハッと目覚める。


「ボンヤリしてどうかしたの?」

「ちょっと湯疲れして眠くなっちゃった。なんか冷たいもん飲んでくるね」


腰掛けていた籐のベンチから立ち上がり、私はまっすぐに見つめてくるりんの眼差しから逃げるように脱衣所から出て行った。
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